改良メダカ情報館

メダカの情報整理用にブログを始めました。改良メダカを詳しく解説!!

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野生集団の遺伝的攪乱

身勝手な放流は生態系のバランスに影響する

「メダカ」は,かつては日本中の小川,水田やため池などでみられた日本人にとって最もなじみの深い淡水魚である.(なお,現在,日本の野生メダカはミナミメダカOryzias latipesとキタノメダカOryzias sakaizumiiの2種に分類されているが,本発表ではこれら 2種の総称として「メダカ」を用いる.)野生のメダカはこの30年あまり䛾の間に圃場整備や農薬䛾使用,外来種の分布拡大等により生息地が激減し,その姿をあまり見かけなくなった.環境省版や地方版のレッドリストにおいて絶滅危惧種に指定されるほど,深刻な状況に陥っている.現在,全国各地でメダカの生息地を回復させるための取り組みが実施されている. 野生の集団が絶滅の危機に陥っている一方で,メダカはもともと飼育魚としても人気の高い魚であり,ここ 10年程でさまざまな色彩や形態をもつメダカの改良品種が作り出されてきた.なかには,もとのメダカとは大きくかけ離れた特徴を持つものもあるが,これらの多様な改良品種のメダカは特定䛾遺伝子上に起きた突然変異を品種として固定しただけであり,種内変異に過ぎない.したがって,潜在的には野生メダカと交雑して子孫を残すことが出来る. これらは改良品種メダカのなかでも,黄色い体色をもつ「ヒメダカ」とよばれる品種は,それ自体が人気の高い観賞魚であるとともに,大量に養殖され,流通しているために安価で入手しやすい肉食性の観賞魚の生餌としても利用されている.また,ヒメダカは飼育や繁殖が容易であることから小学生の理科の教材としても用いられており,現代における最もなじみ深い魚の一つとなっている.実際に多くの小学生は,本当のメダカを知らずヒメダカが本来のメダカであると思っているようである. 近年,このヒメダカが日本各地の野外の河川や水路などでも目撃されている.養殖場からの流出や飼育個体の遺棄的放流も考えられるが,地域や規模は限定的であろう.一方,環境保護活動としての組織的な放流が広範囲かつ影響力の大きい要員として考えられる.放流種苗として入手出来るメダカには,他の地域に由来するものも考えられるが,養殖されて大量入手が可能なヒメダカ(またはヒメダカに野生型を掛け合わせたクロメダカ)が最も入手 しやすいメダカにあたるだろう.私たちは飼育実験から,野生型とヒメダカの体色の違いは群れの形成や配偶者選択には全く影響がないことが分かってきた.このことは,ヒメダカが一度野外に放たれた場合,その遺伝子が野生集団の中に容易に侵入出来ることを意味する.また,私たちが全国に流通しているヒメダカについて生産,流通経路や,遺伝学的な特徴を調査した結果,現在全国に流通しているヒメダカは,単一の種苗集団に由来する集団であること,体色だけではなく遺伝子レベルでヒメダカに由来する遺伝子を検出できることが明らかとなった.私たちは,全国規模での遺伝的撹乱の実態を明らかにするため,2006年から2015年にかけて全国の123地点の野生メダカ集団についてミトコンドリアDNA(mtDNA)と核DNA上の遺伝子の分析を行った.その結果,48地点からその地域には本来存在しない人為的に持ち込まれたと考えられる遺伝子型が検出され,うち4地点からは同時に他地域の遺伝子型も検出されたが,48地点すべてからヒメダカに由来する遺伝子が検出された.この結果は,現在までに起こっている野生のメダカの遺伝的撹乱の主たる要因はヒメダカ(またはヒメダカが関わった交配の子孫)であることを示していた.野生集団における遺伝的撹乱の進行を抑制するためには,ヒメダカの野外への流出をとめることが最優先事項であるといえる.このためにの,ヒメダカをはじめとする改良品種メダカの生産者,それを利用する愛好家から小学生までの幅広い層への啓発が必要であるとともに,何よりメダカを守ろうとしてヒメダカや他地域のメダカを放流する活動をこれ以上広めないことが重要である.また,東京都多摩川水系の野川において上流から下流までの全流程にわたる地点でのメダカのDNA分析調査を行った結果,すべての地点で高い割合でヒメダカの遺伝子型が検出された.複数回または複数箇所におけるヒメダカの放流が行われた可能性もあるが,一度侵入した遺伝子が速やかに同一流程の集団中に拡散していった結果であることも排除することの出来ない.すでに遺伝的撹乱が生じている集団がこれ以上拡散しないように,メダカの流域間の移動をさせないための方策も必要である.多く䛾淡水魚がそうであるように,メダカも地域毎に遺伝的に多様な分化を遂げている.このような遺伝的分化は遺伝的多様性とも呼ばれ,それぞれの地域の環境や地勢によって長い時間をかけて培われてきたものである.さまざまな地域にさまざまな個性ある集団が維持されているからこそメダカという生物が生き残ることが出来るのである.たとえ善意であっても本来その地域に存在しないはずの遺伝子の侵入は,長期的にはメダカの絶滅を加速させることを多くの人に理解してもらう必要がある.それ以前に,現状では守るべき野生のメダカと,利用するための,決して野外に流出させてはいけない改良品種のメダカがいることを理解してもらわなくてはならない.

メダカ改良品種による野生集団の遺伝的攪乱

 

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上記引用文に野生メダカの遺伝的攪乱について詳しく書かれています。
日本のメダカは、北日本に生息する「キタノメダカ」と関東以南に生息する「ミナミメダカ」の2種が存在します。さらに遺伝子レベルの違いでキタノメダカは3グループに分かれており、ミナミメダカは12グループに分かれています。 それと、固有種の遺伝子には、自然環境の変化などに適応してきた地域ごとのデータが遺伝子に刻まれており、純血種の遺伝子情報自体が自然環境の変化やその地域の歴史を分析するための貴重な資料になります。身勝手な改良メダカの放流はやめて頂きたいものですね。

 

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黄金メダカ

余談ですが最近の小学生は本当にヒメダカを野生メダカだと思ったりするんでしょうか…⁇インターネットで調べたりしそうなんですがね笑。
ちなみに僕が好きな黄金ヒカリの元になったのが黄金メダカ。

記憶が定かではないのですが在来メダカ(ミナミメダカ)の選別交配から作出されたと作出元の昔のカタログに書かれて 「ヒメダカから作ったわけではないのか」と改良メダカを飼育し始めた当初は衝撃を受たものです。
後、楊貴妃も黄金メダカの作出過程で出現したと書いていたのでこちらもヒメダカから作られたものではないそうです。

 

メダカ(ミナミメダカ)
本種はダツ目メダカ科に属し、日本全土から朝鮮半島・中国大陸・台湾まで広く分布する。以前は、身近な小川や水路などに広く生息し、浅い池沼、川の流れの穏やかな岸辺などで見られた。しかし、小川や水路のコンクリート化、農業水路と水田の分断などにともない、生息地域の少なくなっている。府内でもほぼ全域に生息していたが、現在、メダカのすむ水辺であった水域では外来種カダヤシが置きかわっている。主に動物プランクトンを食べるが、底生生物や付着藻類なども食べ、表層で群れをなして生活する。水温が20度を越える4月~10月の間に産卵し、しばらく雌の生殖孔に卵を付着させたまま遊泳し、水草などにつける。産卵行動に利用するため、オスの背ビレと尻ビレはメスよりも長く大きく、雌雄の判別の目安となる。春に生まれた個体は、条件が良ければふ化後2~3月で体長2㎝程度になり、その年のうちに成熟する。寿命はふつう1年半 程度であるが、それ以上生きることもある。

大阪府立環境農林水産総合研究所