野生メダカの減少
メダカは1999年に初めて将来絶滅する恐れのある種に指定されました。
その後、2007年に北日本集団と南日本集団のそれぞれが絶滅する恐れのある種に再び指定され、現在に至ります。絶滅危惧種Ⅱ類は100年間に10%以上の確率で絶滅する可能性があるみたいです。
絶滅危惧種とは世界で絶滅の恐れのある種のことで国際自然保護連合(IUCN)がそれらの種をカテゴリーやランク分けし、とりまとめた情報を元にレッドリストを作成しています。
どのランクにも世界共通の基準が設けられており、種が減少する早さや分布する広さ、絶滅確率などです。これらの基準にしたがって評価されているそうです。
メダカが減ってきた原因
稲作面積の減少
1960年頃の稲作面積は300万haで2016年は148万haと50年ほどで稲作面積が約半分になり、メダカの生息場所が減少。
水路やほ場の整備
開発工事は農業の生産性を高める反面、自然の生態系バランスも崩します。
まず、開発工事中に色々な種が死んでしまします。他にも生息環境の激変に対応できない場合もあるでしょう。
田んぼと水路の分断
ほ場整備などで排水路と田んぼの間に大きな段差ができるとメダカなどの魚類は田んぼに上がったり、水路へ下ったりできなくなります。
他にも水路の中や水路が川に落ち込む場所に垂直の落差が造られると魚は上がり下りできなくなってしまいます。
農薬による影響
1950年代から1980年代にかけて稲作りでは普通の昆虫や魚、水生植物も殺してしまう農薬が多量に使用されました。 その結果、魚類をはじめとする多くの生物がダメージを受けました。
現在は農薬取締法などで毒性の強い農薬は使われなくなりましたが生態系に全く影響がないとは言えないでしょう。
外来魚による影響
1970年頃から全国の池や河川に外来魚が侵入したり人の手により放流されて急速に分布域を広げた結果、メダカなどの小魚は格好の餌食となり食い荒らされて減少していきます。
カダヤシはメダカと生息環境が重なる場合が多く、カダヤシの方がメダカより大きいのでメダカが縄張り争いに負け、生息域を失っている可能性もあります。
むやみな放流は遺伝子に影響する
メダカは青森県から琉球列島までの日本と朝鮮半島、台湾、中国大陸の一部でみられる魚です。このように広く分布していますが遺伝的に4つの集団に分けられており、そのうち2つの集団が日本国内に分布しています。これらの2つの集団には尻ビレの条数など形態的な差異あるとも言われています。
近年はメダカの減少に伴い、メダカを繁殖させて自然界へ放流する人間や団体があるんですが、酷い場合はペットショップ等で購入したメダカや改良メダカのハネ魚を放流している事すらあります。改良メダカを放流すること自体は論外ですが違う地域の野生メダカや産地不明の野生メダカなどを放流する場合も、遺伝的な分布の混乱に繋がってしまうのでやめた方が良いでしょう。
また、少数の個体から繁殖させたものはどれも同じような遺伝子を持った個体になりやすく、このような個体を放流することによって、その地域のメダカの遺伝的な多様性が失われる可能性もあります。
もし野生メダカが絶滅した地域にメダカの放流を考えるのであれば、近くの地域の野生メダカを導入し、専門家の指導のもと記録等を残しながら計画的な放流事業にするべきです。
とあるイベントで改良メダカを放流
僕は一度だけ改良メダカが放流される場面を目撃したことがあります。
たまたま足を運んだ田舎の小さなイベントでしたが間違いなく改良メダカのハネ魚を小さな川に放流していました笑。
当時はまだメダカに対する知識が浅く、環境を意識した良いイベントだと思っていましたが野生メダカの実態を知るようになると、こういった類の人間や団体が雑な放流をして遺伝子を無茶苦茶にしてるのかと思うと呆れてしまいますよね。
こちらの記事にも遺伝的分布に関することを書いていますので気になる方はご覧になってください。